「酒田五法」は、江戸時代に本田宗久という相場師が考案したものです。時代は古いですが、その手法は現在でも通用すると言われています。今回は、「酒田五法」のパターンと使い方について分かりやすく解説します。
「酒田五法」は、ローソク足の形や配列から、その相場の状況を把握する手法です。
ですが、この手法は、形や配列に「人間心理」を見て取り、トレードに利用できるように考えられています。
では、詳しく見ていきましょう。
「酒田五法」の意味と利用方法は?
酒田五法の基本的な型は、以下の5種類になります。
- 三山(さんざん)
- 三川(さんせん)
- 三空(さんくう)
- 三兵(さんぺい)
- 三法(さんぽう)
これらの基本パターンは、チャートのフォーメーション分析や様々な複数足分析の土台となっています。
三山(逆三山)とは?
「三川」は、海外では、「トリプルトップ」と言われます。
相場が「転換」する際に現れるサインです。
相場の「高値圏」や「底値圏」に出現することで、効果を発揮します。
レンジ相場の「高値圏」において、レジスタンスライン(レンジ相場の天井)を3回タッチして、山が3つ連なる型を「三川」と言います。
逆に、サポートライン(レンジ相場の底)を3回タッチする型を「逆三川」と言います。
この心理から、3つ目の山が形成されて、下降に転じたら「売り」のサイン。
サポートラインを下抜けした時点でも「売り」のサインとなります。
「逆三川」は、この逆の考え方です。
レンジ相場の「底値圏」で、出現するのが「逆三川」です。
3つ目の谷が形成され、上昇に転じたら「買い」のサイン。
レジスタンスラインを突破した時点でも、「買い」のサインとなります。
「三川」のバリエーションとして、「三尊(逆三尊)」もあります。
海外では、「ヘッド&ショルダー」と言われます。
「三尊」では、一番高い山が、相場の「天井」となります。
「高値圏」で、3つ目の山が、中央の山より低くなれば、サポートラインを拭けて下落すると考えられます。「売り」のサインです。
逆に、「底値圏」で出現するのが「逆三尊」です。3つ目の山が、中央より高ければ、買い勢力が優勢と見て取れるので、「買い」のサインとなります。
三川とは?
「三川」も、「三山」同様、「高値圏」や「安値圏」で、現れてこそ意味があります。
3本のローソク足が、ある特定の配置を見せることで、相場の転換を示します。
「三川」には、以下の5つのパターンがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「明けの明星(宵の明星)」とは?
世界的にも有名なパターンで、海外では「モーニングスター」とも言われます。
「明けの明星」の場合、ローソク足の順番は、「長い陰線」「コマ(ごく短い実体)」「長い陽線」となります。
コマは、陰線でも陽線でも、どちらでも構いません。
「高値圏」で出現すると、「買い」のチャンスです。
大切なポイントは、「コマ」と前後のローソク足の間に「窓」と呼ばれる隙間ができていることです。
たいていの場合、前のローソク足の「終値」を、次のローソク足が「始値」として引き継ぐので、「窓」が開くことはありません。
すごく急激な「売買」が発生し、その勢いが大きすぎて、チャートに反映されない場合に「窓」ができます。
これは、大きな下落が起きた後、売買が拮抗して、3本目で大きな陽線となり、反転したことが見て取れます。
明けの明星が、より信頼できるには、以下の3点の確認が必要です。
- コマの下方のヒゲが長いこと(ヒゲは長い方が良い)
- 3本前の陰線より、陽線が倍以上長いこと
- 次も陽線が出たこと
これらを確認することにより、より信頼度が増します。
「宵の明星」は、その逆で、「安値圏」で出現すると、上昇相場が反転し、下落に転じることを示します。
海外では「イブニングスター」と言われ、「売り」のチャンスとなります。
「明けの流れ星(宵の流れ星)」とは?
「明けの流れ星」は、「明けの明星」の変型判です。
コマが、長いヒゲを持った「陽線」である場合に成立します。
下への長いヒゲは、それだけ下降への力が強かったことを示します。
ですが、それを跳ね返して「陽線」で終わったので、今度は上昇へ転換することを表しています。
「宵の流れ星」は、その逆で、上への長いヒゲを持って「陰線」で終わっています。
これは、さらに上昇しようとした力を、押さえこんだので、下降へのサインと捉えられます。
コマが、流れ星のように、「尾(ヒゲ)」を持っていることから、この名前がついています。
「明けの十字星(宵の十字星)」とは?
「明けの十字星」も「明けの明星」の変形となります。
コマが、始値と終値が同じ「十字線」で終わった場合です。
これは、「買い」「売り」の力が均衡していることを表します。
この「均衡」が崩れて、下降から上昇へ転換すると考えられます。
ヒゲは長ければ長いほど、その信頼度は増します。
「宵の十字星」は、その逆です。
この場合も、ヒゲが長いほど、その信頼度は高くなります。
「両包み」とは?
「陽の両包み」では、小さな「陰線」を、2つの大きな「陽線」が包んでいます。
このように、両側が大きな陽線で、中央が小さな陰線の場合、相場が上昇することを示し、「買い」のサインとなります。
「陰の両包み」は、その逆で、小さな「陽線」を、大きな「陰線」が包んでいます。
この場合は、相場の下降を表し、「売り」のサインとなります。
「上放れ二羽鳥」とは?
長い「陽線」の後、「窓」が開いています。これは「買い」の勢いが大きいことを表しています。
ですが、その勢いが、「売り」の勢いに押されて、「陽線」で終わることができませんでした。
1度でなく、2度も起きているので、「買い」の勢いが完全に終わったことを表し、「売り」のサインとなります。
「窓」から、二羽の鳥が飛び立ったように見えることから、「上放れ二羽鳥」の名が付きました。
「三空」とは?
三空の「空」とは、先ほどから出てきている「窓」のことです。
三空とは、その窓が、同じ方向に「3つ窓が開く」形となります。
FXでは、「窓」が開くこと自体が珍しく、それも3つとなると、まず見ることは無いかもしれません。
ですが、1つでも「窓」が開いたなら、「売買の勢い」が強いことは見て取れます。
三空のパターンは「三空叩き込み」「三空踏み上げ」になります。
「三空叩き込み・三空踏み上げ」とは?
「三空叩き込み」とは、底値圏で、4本連続の「陰線」が発生し、そのすべてに「窓」開いている状態です。
ここから反転が期待できるので、4本目の陰線が完成した時点で、逆張りでの「買い」サインになります。
また、5本目が「陽線」になって、開いている「窓」を埋めるような伸びを見せたなら、反転の信頼度は高まります。
「三空踏み上げ」は、その逆です。
天井圏で、陽線が4本連続。すべてに「窓」が開いている場合、逆張りで「売り」のサインとなります。
三兵とは?
「三兵」とは、長い陽線、もしくは長い陰線が、階段状に3つ並んだ状態です。
三兵では、ローソク足の間に「窓」ができる必要はありません。
3本すべてが陽線か陰線であればいいのです。
酒田五法の多くは、「相場の転換」を予想するものですが、この「三兵」は、「トレンドの継続」を示すものです。
三兵にも以下の5つのパターンがあります。
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
「赤三兵」「黒三兵(三羽烏がらす)」とは?
「レンジ相場」や「安値圏」で、3本の長い陽線が連続したものを「赤三兵」と言います。
「買い」の勢いが強く、上昇の始まりを示しているので、このままトレンドに乗っての「買い」のサインです。
高値圏で発生したなら、すでに「上がりきっている」可能性もあるので、見送りましょう。
また、長めの陰線の後に「赤三兵」が発生しても、その後が陰線だった場合、上昇のトレンドが発生せずに、下降してしまうケースもあります。
この「ポイント」、「黒三兵」では、逆になります。
「高値圏」で、3本の長い陰線が発生したものが「黒三兵」です。
相場が「天井」になっている可能性があるので、下降トレンドに乗っての「売り」のサインです。
ちなみに、3本の陰線を3羽の鳥に例えて、「三羽烏」とも言います。
「赤三兵の先詰まり」「黒三兵のさき」とは?
赤三兵でも、陽線に長いヒゲが付いている場合は、トレンドが継続しない場合もあります。
特に、2本目・3本目に長いヒゲが付いていたら要注意です。
これを「赤三兵の先詰まり」と言います。「先詰まり」という言葉が表しているように、上昇が先詰まりして、下降に向かう場合があります。
「赤三兵の先詰まり」が発生した場合は、下降に転じることを考え「売り」のサインとなります。
「黒三兵の先詰まり」はこの逆です。
この場合は、「下降の勢い」に疑問が生じ、上昇に転じてしまうことが考えられます。
ですから「黒三兵の先詰まり」が見られた場合は、上昇に転じることを考え「買い」のサインとなります。
「赤三兵思案星」「黒三兵思案星」とは?
「赤三兵思案星」とは、陽線が続いているものの、3本目が小さな実体の陽線か、十字線の場合のことです。
「先詰まり」と同様に、上昇の勢いが無くなっていることを表しています。
すでに、「買い勢力」は衰えているので、「底値圏」であっても、まだ下降すると考えられ、「売り」のサインとなります。
「黒三兵思案星」はその逆で、「売り勢力」が弱まり、上昇していくことを表し、「買い」のサインとなります。
「坊主三羽」とは?
「坊主三羽」は、「黒三兵」の中でも、3本の陰線すべてに「下ヒゲ」が無い場合です。
下ヒゲが無いということは、「買い勢力」に、全く邪魔されずに価格が下がったことを表しています。
「買い勢力」の抵抗が見られないので、さらに下降が予想されます。
もう一つのパターンとして、「同時三羽」がありますが、これは「黒三兵」とほぼ同じ意味ですので、ここでの説明は割愛します。
三法とは?
「三法」の前提は、相場の動きが止まり「レンジ相場」となり、三法の言うところの「休むべし」の状態になっていることです。
つまり、「三法」とは、「レンジブレイク」を見て取る手法です。
三法のパターンは、「上げ三法」「下げ三法」となります。
「上げ三法」は、レンジ相場から抜けて、上昇に転換する時のパターンで、「買い」のサインとなります。
ポイントは以下の通りです。
- まず1本目が大きな陽線になります
- その後、陰線が続き、小さく反転します
- ただし、1本目の陽線の始値を越られず反転
- 1本目の陽線の終値をも越えるような長い陽線が出る
これで「上げ三法」が成立です。
相場が上昇に向かう状態となり、「買い」のサインとなります。
ただし、小さな反転が伸びて、1本目の陽線の始値を越えたり、最後の陽線が、あまり伸びずに終ってしまうと、「上げ三法」とはなりません。
「下げ三法」は、その反対で、レンジ相場を「下」に抜けることを意味し、「売り」のサインとなります。
終わりに代えて
以上、「酒田五法」について解説しました。
「酒田五法」は、もともと「日足」の分析から始まったものなので、
「日足」「8時間足」「4時間足」といった長めのローソク足で、より効果を発揮します。
「15分足」「30分足」などの「分足」では、使えないとまでは言えないものの、その有効性が低下する懸念があります。
つまりは「スイングトレード」「デイトレード」向けとなり、「スキャルピング」では、使用できるものではないと言ってよいでしょう。
また、他のテクニカル指標と合わせて使うことで、より信頼性が高まります。
コメント