~宇宙のことを知りたい方へ~私たちが宇宙について知ってることは、宇宙全体のたった5%でしかありません。あとの95%はまるっきり分からないのです。宇宙の95%は「ダークマター」「ダークエネルギー」だと言われています。今回は、謎に包まれた「ダークマター」「ダークエネルギー」について、小学生でもわかるようやさしく解説します。
宇宙には、たくさんの星やブラックホールがあるのはわかるけど、それだけじゃないの?
そうですね。星などがあって、あとは何もないイメージがありますよね。ですがそれらは、宇宙にあるものの中のたった5%でしかないのです
もう少しくわしく言うと。私たちが見えているもの、または観測されているものは、宇宙の中のたった5%でしかありません。
そのほかは、「ダークマター」が25%、「ダークエネルギー」が70%だというのです。
しかも、いまだにどちらも「発見」されてもいません。「発見」されてないものが、なぜあると言えるのでしょうか?
「ダークマター」「ダークエネルギー」の正体とはなんなのでしょうか?
科学の世界では、「これがないといろいろと、つじつまが合わないから、必ずあるはずだ!」と考えます。
そして、たくさんの科学者が研究して「発見した!やっぱりあった!」というものが、数多くあります。
「ダークマター」や「ダークエネルギー」もそのひとつ。これがないといろいろと都合が悪いのです。
では、「ダークマター」「ダークエネルギー」の正体に迫っていきましょう。
※ちなみに、「ダークマター」を日本語にすると「暗黒物質」。まだ発見されてないので、仮にこう呼ばれています。
「ダークマター」がないと困る?
「ダークマター」はあるはずだ!ということになったのには、2人の科学者の「発見」があったからです。
ここからは、その2人の「発見」についてお話します。
銀河が軽すぎる?
上の写真は一つの「銀河」です。宇宙にはこの「銀河」が無数にあります。
そして、いくつかの銀河が集まって、「銀河団」を作っています。それが下の写真です。
太陽の周りを地球が回っていることは知っていますよね。
太陽と地球がおたがい「重力」で引っ張り合っているので、地球は太陽から離れて行ったりはしません。
「銀河団」でも同じことが起こっています。
銀河同士が「重力」で引っ張り合っているので、銀河たちが離れて行かないで、「銀河団」を作っていられるのです。
はじめに「ダークマター」の目をつけたのは、1933年、スイス人の科学者フリッツ・ツビッキーでした。
ツビッキーはいったい何を見つけたのでしょうか?
1つ1つの銀河は、「銀河団」という水槽の中を、魚のように動き回っています。
動き回ってはいますが、決して水槽の中からは出ていきません。
ツビッキーはまず、「銀河の動く速さ」を測りました。
「銀河の速さ」が分かれば、銀河をつなぎとめている「銀河団」の重力の大きさが分かります。
そして、「銀河団の重力の大きさ」が分かれば、「銀河団の質量」が予測できます。
「重力の大きさ」は「質量の大きさ」で決まるからです。
「質量とは?」 ※分かる人はとばしてください
「重さ」と「質量」はちがいます。
「重さ」は「場所」によって変わってしまします。例えば、地球で計ったら体重60㎏の人は、月で計ると10㎏になります。月の重力は、地球の6分の1だからです。
「質量」は場所によって変わったりしません。もともと物体がもっている量であると、考えていいと思います。難しい言い方をすると、「物体の動かしにくさ」であるといいます。
そうして分かった「銀河団」の質量を見て、ツビッキーはとても驚きました。
「銀河団」の質量が大きすぎたからです。
どういうことでしょうか?
「銀河団」の質量は、「銀河団の重力の大きさ」から測るだけではなく、次のようにも測れます。
「銀河団」は「銀河」の集まりでしたね。
そして「銀河」は、星やガスが集まったものです。
ですから、銀河の質量は、星+ガス で答えが出ます。
これで1つ1つの銀河の質量は分かります。
「銀河団」を作っているすべての銀河の質量を合わせると、「銀河団」の質量がわかりますね。
ツビッキーは、何に驚いたのか?
ツビッキーが、「銀河団の重力の大きさ」から分かった「銀河団の質量」より、
「見えるもの」を足してわかる「銀河団の質量」のほうが、とても「軽かった」のです。
逆の言い方をすると、ツビッキーが計算した「質量の大きさ」は、「目に見えるもの」で分かる「質量の大きさ」より5倍も大きかったのです。
このことから、どんなことが分かるのでしょうか?
それは、「銀河団の質量」は「目に見えるもの」だけでは足りない。
「銀河団」の中には、「目に見えるもの」の5倍の「目に見えない何か」がある、ということになるのです。
つまり「ダークマター」があるのではないか? ということです。
計算がまちがってただけじゃないの?
他の科学者たちも、そう思いました。ツビッキーの考えは、その時はあまり信用されませんでした
やっぱり何かある?
ツビッキーの考えは、1960年ごろ注目されるようになりました。アメリカの科学者ヴェラ・ルービンによって、「やはりダークマターはあるのでは?」となったのです。
銀河は、うずをまくように回転しています。
写真でも分かるように、はしっこのところは、うすいですよね。
これは中心より、はしっこの方が星の数などが少ないからです。
中心部は星が多い分、質量が大きい。はしっこは星などが少ない分、質量は小さい。
質量が大きいと回転速度は大きくなり、質量が小さいと回転速度は小さくなる。
どういうことかと言うと、本来なら、速度の遅いはしっこは、速度の速い中心について行けずに「おいてきぼり」にされてしまうはずなんです
つまり、中心から離れて行ってしまうので、写真のようなきれいな「うず」の形を作ってはいられないのです。
ヴェラ・ルービンは、銀河のはしっこの速度を調べてみました。
すると、はしっこも中心と同じ速度だったのです。
他のたくさんの銀河も調べましたが、やはり、はしっこと中心部の速度はほとんど変わりませんでした。
これはどういうことでしょうか?
星が少なく「すかすか」なはずのはしっこの質量は、星が多い中心部と同じくらい質量を持っているということになります。
「目に見える」星だけを足しただけでは、質量がぜんぜん足りない。
ということは「目に見えない何か」があって、はしっこの質量を増やしている。
ということになるのです。やはり「ダークマター」はあるのだ。となったのです。
「ダークマター」って何?
では「ダークマター」とは何か?
残念ながら、今のところその「正体」は分かっていません。
- 人には見えない星なのでは?
- ブラックホールなのでは?
などなど、考えられていますが、どれも「なんか違う」となっていて、その「正体」はつかめていません。
ですが、「ダークマター」があるところは分かってきています。
「ダークマター」は宇宙全体に広がってはいるのではなく、「ある場所」と「ない場所」があるようなのです。
「ダークマター」がある場所は、星や銀河が作られる場所と同じ場所にあるようです。
これは「ダークマター」が星や銀河ができあがるのに必要だったからです。
実際、コンピューターシミュレーションで、「ダークマター」がまったくない宇宙を再現してみると、星や銀河はいつまでたってもできなかったのです。
今の宇宙があるのは「ダークマター」のおかげなのです。
「ダークエネルギー」とは?
宇宙の中に70%もあると言われている「ダークエネルギー」とは何なのでしょうか?
「エネルギー」はそもそも、「目に見える」ものではありません。そのようなものがあることに、どうやって気がついたのでしょうか。
宇宙はスゴイいきおいでふくらんでいる?
私たちの宇宙は、すごいスピードでふくらみ続けています。
そしてそのスピードはどんどん速くなっています。
でも、本当はこんなことは起こらないはずなのです。
どういうことでしょうか?
上の図を見てください。星同士には、お互いを引っ張り合う「重力」があります。(茶色のやじるし)
宇宙がふくらもうとしても(赤いやじるし)、「特別なエネルギー」でもないかぎり、この「重力」がじゃまをして、ふくらむスピードはおそくなり、やがては止まってしまうはずなのです。
ですが、宇宙のふくらむスピードは、おそくなるどころか、どんどん速くなっているというのです。
このことから、「宇宙をふくらましている何か特別なエネルギーがある」ということが分かります。これが「ダークエネルギー」なのです。
「ダークエネルギー」は変なエネルギー?
物は、何もないところから、「自然に」出てくることはありえませんよね。エネルギーも同じ。「自然に」エネルギーが増えることはありません。
また、エネルギーは使えば使うほど減ってしまいますよね。
ですが「ダークエネルギー」は「自然に」増え続けている、というのです。
どういうことでしょうか?
※エネルギーは目に見えないので、ここでは「ボール」とします。
上の図のように、宇宙がふくらみ続けると、ボール(エネルギー)はどんどん弱まってしまうはずです。
ですが、実際の宇宙はふくらみ続けています。
これは何を意味しているのか?
「ダークエネルギー」は、何もないところから「自然に」増えている。
ということになるのです。
「ふつう」にエネルギーは自然に増えたりはしません。
自然に増える「ダークエネルギー」とは、「ふつう」と違う変わったエネルギーと言えます。
このように、「ダークエネルギー」は、「宇宙をふくらませる」ために必要なエネルギーであり、また「変わっているエネルギー」なのです。
ですが、「ダークエネルギー」の正体は、やはりまだ分かっていません。
まとめ
「ダークマター」「ダークエネルギー」について、できるだけ「分かりやすく」お話してきました。どうでしょう?お分かりいただけたでしょうか?
世の中には、まだまだ人間の分からないことがたくさんあります。
「ダークマター」も「ダークエネルギー」も「あることは分かっている」のに、その正体が分かるのは、まだまだ先になりそうです。
ある科学者によれば「今世紀(21世紀)中には分かるのでは?」というほど、むずかしい問題なのです。
科学は、「鬼滅の刃」の炭治郎のようです。「何かできるようになる」と「また新たなカベにつき当たる」。
科学も「何かが分かったら」また「新しいナゾにつき当たる」のです。
人類は、いつか全知全能の神のように、宇宙のすべてを知ることができるのでしょうか?
おしまい
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