~思春期の娘さんを持つ父親の皆さんへ~ 娘と会話しようとしても無視される、存在をウザがられる、そんな思いをしている父親は多いことでしょう。今回は、脳科学における「女性脳」「男性脳」の違いをもとに、思春期の娘さんとの「上手な付き合い方」について解説します。
あなたは、スマホに夢中の娘さんに、こんな風に話しかけることはありませんか?

何やってんだ。
・・・・・・(イラッ)

しかし、娘さんは何も答えないどころか、鋭い目線を向けて、不機嫌そうに、自分の部屋に行ってしまう。
こんな経験ありませんか?
小さいころは「お父さん、お父さん」となついてくれていた娘も、思春期に入ると、父親を「ウザがるように」なる。
父親としてみれば、なんとも悲しいことです。
しかし、これには「科学的な原因」があるのです。主に以下の2つにその原因を見ることができます。
- 娘さんとのコミュニケーションの取り方が悪い
- 娘さんが生物的に成長している
それでは、まず「コミュニケーション」の部分について詳しく見ていきましょう。
娘をイラつかせる父親の質問とは?

ここからは、「女性脳」の持ち主である娘さんや奥さんに、してはいけない「質問」についてお話していきます。
5W1Hの質問はNG
5W1Hとは、「いつ、どこで、だれ、なに、なぜ、どのように」ということですが、
これを使って、女性にいきなり質問してはいけないのです。
例えば、妻が見慣れないワンピースを着ていたとしましょう。
あなたは、特に悪気もなくこう質問するでしょう。

それ、いつ買ったの?
あなたは、純粋に「いつ買ったのか」を知りたいだけ。
でも、妻にはそうは聞こえません。
「俺に黙って、そんな高そうな服、いつ買ったのか?」って言ってるわね(# ゚Д゚)

妻はこのように解釈して、不機嫌になるのです。
あなたにしてみれば、「昨日、〇〇で買ってきたのよ」という答えを期待して質問したのに、
妻には、そうは聞こえません。
どうしてなのでしょうか?
5W1Hの質問で女性は戦闘モードに入る?
「それ、何?」「いつ買ったの?」「何してたの?」「宿題やったか?」「どこ行くの?」「何してた?」
このような「5W1H」を入れただけの質問は、「女性脳」を戦闘モードに入れてしまうのです。
つまり、あなたが純粋に「いつ買ったの?」と聞いたとしても、妻には「(俺に黙って)、(そんな高そうなもの)いつ買ったの?」と聞こえるわけです。
このように攻撃されたと感じるため、身を守ろうとイライラしたり、時には反撃行動に出ることもあります。
そもそも、女性は5W1Hの質問を、相手を攻撃するために使います。
女性が「それ、いつ買ったの?」と質問した場合は、確実に「わたしに黙って何買ってるの?」という意味であり、
「どうして、そこに置くの?」は、「邪魔だから片付けてよ」という意味。
あなたが、スマホに夢中になっているとき、覗き込んで「何してるの?」と聞いてきたら、それは「(他にやることもあるだろうに)何してるの?」という意味なのです。
ですから、冒頭でお話した、携帯に夢中の娘さんに、「何やってんだ」などと聞いたものなら、
娘さんには「(勉強もしないで)何してんだ」と聞こえるわけです。
父親のみなさんでも、ただ質問されただけなのに、「緊張感」を感じることがあるのでは?
例えば、社長とエレベーターで乗り合わせたとき、社長がいきなりあなたの服を指さして「何だこれは?」などと聞かれたら、「何かやらかしたか?💦」と、緊張感が走りませんか?
人は、権力者の「5W1Hのみ」の質問に、緊迫するのです。攻撃されたと思い、身を守ろうとします。
娘さんや奥さんにしてみれば、あなたは経済力を握っている「権力者」です。
経済力という、父親の「権力」に頼らなければならない娘さんにとって、「何それ?」と聞いてくる父親は、自分を攻撃する「ウザい」存在でしかないのです。
では、どのように「会話」を始めると良いのでしょうか?
次に、「娘さんに嫌われないコミュニケーションの取り方」についてお話します。
娘さんとうまく「対話」する方法とは?

「対話」には2種類あります。
- 問題解決型の対話
- 心の対話
では、まずこの2つの「対話」の違いからお話しましょう。
2つの「対話」の違いとは?
まず、「問題解決型の対話」と何か?
これは、男性脳が得意な対話の仕方で、「ゴール設定(どこ、だれ、なぜ、いつ、なに、どのように)」から始まり、「問題提起」をして、「問題点を指摘」しあって、「解決」に着地する、という対話形式。
狩りをしていた時代から進化した「男性脳」は、「感情的なこと」には、わき目もふらず、獲物を取ることに集中するようにできています。
余計なことに反応していては、獲物を取り逃がしてしまうからです。
ですから、対話においても、5W1H(どこ、だれ、なぜ、いつ、なに、どのように)という部分を大切にする対話の形式になってしまいがちです。
さらに、この対話形式は、「ビジネスの基本」でもあるため、世の中の父親は、家庭においても、この「問題解決型の対話」になってしまうのです。
反面、女性脳は「問題解決型の対話」を嫌い、「心の対話」の方を好みます。
では、心の対話とは何でしょう?
心の対話とは、「気づいたこと(それ、可愛い)(素敵ね)」
「感情体験の告白(大変だった、うれしかった、悲しかった、などなど)」から、対話が始まり、
「人からの共感」を得て、「新たな気づき」や「安心感」で着地する。
男性脳は、「落ちがある」「意味がある」話を好みますが、女性脳は違います。
それほど意味もない「感情」や「行動」を聞いてくれて、それに「共感」してくれることで、「安心感」「新たな気づき」を得ることが大切なのです。
当然「女性脳」を持つ娘さんも、「心の対話」を好みます。
では、具体的にどのように「心の対話」をすればいいのでしょうか?
質問から始めてはダメ?
「心の対話」は決して「質問」から始めてはいけません。
女性同士の会話では、「このごろ仕事の調子はどう?」「そのスカート、いつ買ったの?」などと質問からは始めません。
たいていは、

そのスカート、ステキねえ!
と、始まると、
そう?うれしい! 昨日〇〇で、手頃な値段だったから買ってみたの。

と、続いて、

〇〇行ったの?
と、ここで「質問」を投げかけても
そうなのよ。それでね・・・・・・

と、「会話」を引き出すことができ、どんどん弾んでいきます。
つまり、女性は、「心の対話」を、友人と楽しもうとしているので、いきなり「5W1H」で質問したりしないのです。
男性脳を持つお父さんでも、次にお話する「方法」を使えば、娘さんの「会話」を引き出すことができます。
「会話」を呼び込む「導入」が大事?
今までのお話でお分かりのように、女性から「会話」を引き出すためには、いきなりの「質問」はNGです。
「会話」を引き出すには、以下の3つの方法があります。
- 相手の変化に気づいて、それを言葉にする
- 自分に起こった出来事を話す
- 相談する
この中でも「相手の変化に気づいて、それを言葉にする」は、女性がとても喜ぶことです。
ですから、先の「見慣れないワンピースの話」で、妻に言うべき言葉は、
「そのワンピース新しいね、可愛いじゃないか。」
が正解なのです。
ですが、これは思春期の娘さんには、しない方がいいでしょう。
後で詳しくお話しますが、思春期の娘さんは、「生理的に」父親を気持ち悪く思っているので、変化に気づかれること自体が、「ウザくて」「気持ち悪い」のです。
ですから、娘さんには、
- 自分に起こったことを話す
- 相談する
ことで、「会話」を引きだした方が良いでしょう。
自分の話から始めよう
まずは、自分に起きたことを話すことで、娘さんから「会話」を引き出せます。
特に変わったことでなくてもいいのです。

今日のお昼に激辛ラーメン頼んだら、辛すぎて食べきれなったよ。
〇〇公園の桜、もう咲いてるね。きれいだったよ。


新しいアプリ見つけたんだけど、なかなか便利なんだよ。
このように、何の「オチ」もない話でいいのです。変に「オチ」があったほうが、「へえ~そう」で終わってしまうかもしれませんし。
思い返せば、あなたの妻も、こんな何の変哲もない話をしませんか?
女性は、このような話をして、「会話」を誘導しているのです。
とはいえ、今までそんなことを話したこともないのに、急に話し始めると、娘さんにスルーされてしまうかもしれません。
スルーされてしまったら、「次の手」を使いましょう。
相談する?
相談、または「頼りにする」ということをしてみましょう。
というのは、人は、「何かをしてもらった相手」より「自分が何かしてあげて、それを喜んでくれた相手」の方に、情が湧くからです。
脳の機能から言えば、「親切にされた人の脳」より「人に親切にした人の脳」の方が、より充実感が得られる、というわけです。
親切にされた人より、した人のほうが幸せで、得だということです。
ですから、娘さんを頼りにして、相談し、それを父親が喜ぶことで、娘さんの充実度が上がることになります。
相談事や頼み事はささいなことでいいのです。

今度のお母さんの誕生日。どんなプレゼントがいいかなあ?
今度、リモートで会議するんだけど、やり方が分からないから教えてくれるかい?

などなど。このように相談されたり、頼りにされることは、人にとってうれしいことです。
娘さんもスルーしにくいのではないでしょうか。
初めは、イヤイヤながら、相談に乗ってくれたり、協力してくれたりするかもしれません。
ですが、その都度、喜び、感謝する父親を見ているうちに、娘さんも「充実感」を味わい、悪い気がしなくなるのではないでしょうか。
では、次に父親をウザがる原因の2つ目である「生物的な成長」の部分について、詳しく見ていきましょう。
父親が「臭い、汚い」は成長の証?

小さいころは「パパとじゃないと結婚しない!」などと言ってくれていた可愛い娘が、
思春期ともなると「ウザい」「臭い」「汚い」などと言われる・・・・・・。
何とも切ないですが、ほぼ世界中の娘さんが、思春期にはこうなります。
それは、生物的に成長して、「脳」にある変化が起こるからです。
では、どのような変化が「脳」に起こっているのか、詳しく見ていきましょう。
生殖ホルモンが娘を変える?
思春期では、生殖器官を成熟させるために、大量の生殖ホルモンが分泌されます。
この大量の生殖ホルモンが娘さんを豹変させるのです。
生殖ホルモンは人間の意識に強く作用します。
男性の場合、多く分泌されるのは「テストステロン」というホルモン。
これは、やる気・好奇心・縄張り意識・独占欲・攻撃性を高めるホルモンです。
女性のテストステロンの分泌量は男性ほど多くはありませんが、それでも、思春期の娘さんもまた、縄張り意識や攻撃性は出ます。
思春期の娘さんも男の子も、自分の部屋に勝ってに入られたり、友だち関係について何か言われると、猛烈に怒る。
これが、一般的に「反抗期」と言われる状態です。
つまり、「支配されたくない」「かまってほしくない」という状態で、脳がいっぱいいっぱいなのです。
ちょっと、ツツくだけで爆発してしまうほど。
そんな状態だから、父親が視界に入っただけでも「ウザい」となるのです。
これは、娘さんの成長過程として、どうしようもないこと。
父親としては、なんとも寂しい限りですが、大人になるための「必要な儀式」と考えた方がいいでしょう。
お父さんが臭いのは仕方ない?
思春期の娘さんにとって、お父さんは、本当に臭いのです。
それは、動物が子孫を残すために必要なプロセスだからです。
動物は「フェロモン」という匂い物質で、生殖する相手を選んでいます。
そして、このフェロモンは、免疫を制御する「HLA遺伝子」の種類と対応しています。
つまり、動物は、自分の免疫のありようを、臭いで表現しているのです。
「HLA遺伝子」の型が異なる相手と繁殖したほうが、より強い子孫を残すことが出来ます。
その方が、子孫の免疫抗体のバリエーションが増えるからです。
例えば、寒さに強い個体と、暑さに強い個体が交配すれば、子孫には、どちらの型も残ることになり、
気候の変動に強い子孫を残すことができます。
ですから、HLA遺伝子の型が異なる男女ほど、相手の体臭が好ましく思え、逆にHLA遺伝子の型が似ている相手の体臭は好ましくない、ということになります。
そして、HLA遺伝子の型の違いを嗅ぎ分ける能力は、父親から受け継いだ遺伝子に依存していると言われます。
すなわち、父親から受け継いだHLA遺伝子を元に、その型と、違う型を嗅ぎ分けていると考えられるのです。
これが、何を意味しているかというと、
HLA遺伝子の型が完全一致する父親は、娘さんにとって「この世で一番ありえない男性」であり、
「この世で一番ありえない臭いがする男性」ということになのです。
ですから、思春期の娘さんが「お父さん、臭い!」となるのは、生物として当たり前であり、自然なことと言えます。
以上、父親をウザがる原因の2つ目、「生物的な成長」について、お話してきました。
基本的には、お父さんは「こういう時期だから仕方がない」とあきらめるしかないのです。
でも、それでは「寂しい」という場合、父親にできることはあるのでしょうか?
最後に、そのことについてお話します。
思春期の娘には夫婦で対応する?

娘さんが、父親を「毛嫌いする」理由が、「生物的な成長」に起因するものであったとしても、
小さいころ、なついてくれていたことを思い出すと、寂しいものです。
生物の本能だから、仕方がない部分は確かにありますが、娘さんも人間、本能だけで生きる動物とは違い、理性もあり、また、将来のこともあります。
父親へ、目に余るような暴言を吐くような事態になれば、対応する必要があります。
というのは、このようなことを許してしまうと、将来、外部でも同じようなことをする可能性があるからです。
自分の感情だけで、相手のことも考えずに言葉を発する。
このようなことを、大人になってもするようであれば、当然周囲との人間関係はよくなりません。
これを機に、どんな人であれ、自分の感情のまま付き合ってはいけない、思いやりの心を持つことも必要であることを教えるのです。
とはいえ、父親の説教なんて死んでも聞きたくない、という時期です。
ではどうすればいいのか?
ここで重要な役割をするのが「母親」です。詳しく見ていきましょう。
お母さんはお父さんに味方する?
父親が直接的に行動できないのなら、間接的に母親から伝えてもらうしかありません。
娘さんが、父親に対して「臭い」「汚い」と言ったなら、母親が注意すべきなのです。
娘さんが、「洗濯物は別にしてほしい」とか、「お父さんが入ったお風呂には入りたくない」などと言ったなら、

じゃあ、洗濯は自分でしなさい。お風呂もさっさと、一番に入ればいい。でもそんなことをお父さんに言ったら、お母さんは許さないわよ。
と言えばいいのです。
また、悲しんでいる様子を見せるのもいいでしょう。
お母さんも高校生の頃はそうだった。でも、あんなにあなたのことを可愛がってるお父さんに、そういう態度を取るのは悲しいわ。

このように、たとえ家族といえども、言っていいこと、悪いこと、取ってはいけない態度がある、ということを教えなけれないけません。
この時期の娘さんは、「支配されたくない」という反抗期。直接的に説教しても、その「攻撃性」を刺激してしまいます。
ですから、人間の持つ「良心」に働きかける言い方が大切です。
先ほども言いましたように、生物的な成長期にあっても、動物のように、本能だけで生きているわけではありません。
人間が持つ「理性」に働きかけることのほうが、納得しやすいのです。
どのような家族でありたいのか?
ということで、お父さんにしてみると、お母さんの役割は重要です。ですから、日頃から、妻を大切にすることが、自分を助けてくれることにもなります。
そこ、大事なんです。
お父さんは、対娘だけでなく、対妻という部分が大切であることに気づいてください。
つまり、思春期の娘さん、妻、父親である自分、それらを含めた家族がどのようなカタチであることが望ましいのか、と考えることが、根本にあるわけです。
言いたいことを言うことが「家族」なのでしょうか?
年のせいもあり、太ってしまったお母さんに「デブだなあ」と言ってもいいのか、
勉強が苦手な娘に「馬鹿だなあ」と言っていいのか、
毎日頑張って仕事をして帰ってくるお父さんに「臭い、汚い」と言っていいのか。
そんな家では、娘さんだけでなく、家族みんなが「居たい家」ではなくなってしまうのではないでしょうか?
家族と言えど、何でも言い合えばいい、というものではありません。
言い方ひとつで、相手を傷つけることもあるし、悲しませることもある、ということを娘さんに教えることも大事。
そして、そのことを、夫婦間で実践して、娘さんに日頃から見せてあげるのです。
つまりは、お母さん、お父さんが、お互いにいたわり合っている姿を、娘さんに見せることが、後々の娘さんの言動に大きく影響するのです。
おわりに代えて
以上、父親がウザがられる2つの理由と、その対処法についてお話してきました。
娘さんとの「コミュニケーション」については、思春期からするのではなく、実は、小学生以前から行うべきことなのです。
思春期になって、急にお父さんの態度が変わっては、娘さんも戸惑うのは当たり前。
そうなる前から、適切なコミュニケーションを取っていれば、思春期になってウザがられる度合いが、軽減されることは間違いないでしょう。
では、もう遅いのか?と言えば、そうでもありません。
根気よく、コミュニケーションを取ることで、娘さんの「良心」に訴えかけることはできます。
また、母親の存在は大きく影響します。母親が常に父親の味方であることは、娘さんにとっても、嫌なことではないからです。
こう考えると、大事なのはやはり、家族全体の「ありよう」なのです。
夫婦が、お互いをいたわり、大切にする。
そういうお母さん、お父さんの姿をみて成長した娘さんは、決して母親・父親をないがしろにする人間には育たない、と私は思います。
おしまい
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